国と自治体が、災害時のデータ共有に向けた取り組みを進めている。市町村の被害状況を県や国がいち早く把握し、的確な支援につなげるためだ。ただ、1月の能登半島地震では情報連携システムが十分に機能せず、かえって現場の負担を増やす場面もあった。停電や通信の途絶も想定されるなかで、防災のデジタル化は試行錯誤が続く。
- 「防災システムの共通化」で住民を守れ 防災科研・臼田センター長
防災情報をクラウド型のシステムに集約
「氾濫危険水位に達しました」
5月、熊本県庁の防災センターに進行役の職員の声が響いた。
梅雨と台風のシーズンを前に、県内全45市町村と毎年重ねる訓練での一幕だ。大画面の「防災情報共有システム」を参加者が一斉に見つめる。
市町村側がパソコンで被害の発生場所や時刻、人的被害の有無などを入力すると、リアルタイムで反映される仕組みだ。県は消防や警察からの情報もここに集約し、自衛隊などと支援を調整する。
画面には、道路や家屋の被害や気象情報も地図上で整理されるため重複も避けやすい。
2016年の熊本地震を機に開発をはじめ、20年に導入した。特別な回線や端末がいらない「クラウド型」で、スマホなどからも操作できる。
全国つなぐ国の新システム、4月スタート
広域災害が全国で多発するなか、デジタル技術の活用は不可欠になっている。現場の市町村だけでは対応できず、県や国が支援に入る場面が相次いでいるからだ。
市町村の職員がまとめるデータを県や国がそのまま利用できれば、「集計」や「送信」の作業に手数をかけなくても支援の判断ができる。
熊本県のように県内の情報を集約するシステムは、ここ数年で、多くの都道府県が導入している。国は今年度、それを全国で連携させる「新総合防災システム」の運用を始めた。来年中に中央省庁と自治体などの接続を進めたい考えだ。
内閣府の担当者は、「災害対応は時間との勝負。初動の段階で全体最適が図れれば、重複や漏れのない効果的な対応ができるようになる」と語る。
■県と市で連携できないデータ…